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インタビュー

株式会社 三越伊勢丹 婦人・子供統括部婦人第一商品部 YA-A セレクト2 バイヤー 越智伸之氏インタビュー

まずは、創立50年本当におめでとうございます。日本の戦後のファッション史を牽引してきたと言っても過言ではないくらいの歴史を築かれていて、我々も色々なデザイナーさんをはじめ、つながりを持つこともあり、一緒にやってこられたことを誇らしく思います。これからもますますのご発展を祈念しています。

『Asia Fashion Collection』は、三越伊勢丹としても非常に注目していたところ、バンタンの講師である「AKIRA NAKA」のデザイナーの中章さんにお声掛けいただいたことがきっかけで、今回、審査員を務めさせていただきました。私自身、今回初めてバンタンの学生さんたちと接点を持ったのですが、『Asia Fashion Collection』を拝見し、参加されたみなさんのレベルは極めて高いと感じました。みなさんのクリエイションが、ビジネスとして成り立つような指導を徹底していると衝撃を受けたんです。学生を見ているというよりは、デザイナーの卵を見ているようで、こちらもレベルの高い審査を行わなければならないと身が引き締まりましたね。

多くのブランドが、ブランディングという観点を最初にきちんと説明して、その後にマーチンダイジングの観点、ターゲットやアイテムのバランス、マーケットがどれくらい存在するか、価格の付け方など、ブランドとしての仕組みをしっかりと組み立てた上でものづくりに入っているという印象でした。デザイナーがものづくりをして、世の中に認められるには、必ずビジネスという通過点を超えないかぎり、消費者の手には届かないですよね。そうでなければ、ただのアートになってしまいます。私がバイイングする時は、常にこのようなことを考えながら行っているので、非常に波長のあうプロ意識の高い方々の集まりなのだと思いました。

三越伊勢丹グループには「this is japan」という企業メッセージがあります。三越伊勢丹グループは、2011年より4年にわたり、日本の伝統・文化・美意識が作り出す価値を再認識し、新しい価値としてお客さまにご提供する取組みである「JAPAN SENSES」を、年間を通じた営業施策として位置づけ、推進してきました。2015年からは「JAPAN SENSES」が担う役割は継続しながら、その取組みを更に深化させ、企業メッセージ「this is japan.」として、商品はもとより販売サービスに至るまで、世界に通じる日本の良さを、グループを挙げて提案しています。この考えに基づき、私としても日本の産地の背景や生地を使い、日本のクリエイターに参加してもらって世界に日本のファッションをもっと積極的に発信していかなければならないと思っています。昨年の12月にバイイングの途中でパリに立ち寄り、百貨店の「ボンマルシェ」で行われていた“ル・ジポン”という日本のイベントを拝見しました。会場に入って驚いたのは、「ここは原宿か、渋谷か?」というような“日本のリアル”を感じられる服や雑貨がたくさん扱われていたことです。パリの人から見た時に、“日本のリアル=格好良い”になっているのだと感じました。ステレオタイプの和柄や呉服のディテールを使った服に需要があると思っていましたが、日本を世界へ売り出すには、もっとシンプルにこのリアル感だけでも勝負できるのだと確信したんです。

そういった日本のクリエイターを世界へ発信していくという観点からも、『Asia Fashion Collection』のような取り組みは、とても有意義な取り組みになっていると思います。ただ、これからプロになられたり、就職したりすると、なかなか自由にやりたいことができなくなると思うので、学生の時期は、自分自身のクリエイションを掘り下げていくことが大切です。求められることとやりたいことの狭間の中で常に戦うのがプロのクリエイターです。バンタンは、そこに至るまでに自分のやりたいことが何なのかということを、教育という場で指導しながら学生がやりたいことを見つけ出してあげる場所だと思います。我々三越伊勢丹も新進気鋭のデザイナーを発掘して育て、一緒になって世界に出ていく“インキュベーション”という使命があります。これからもバンタンには即戦力をどんどん輩出していただいて、そして我々も世に知られる前のクリエイターの才能を見抜いて、様々な形でタッグを組んで取り組みを行うことで、一緒に業界を盛り上げていきたいなと思います。