HOME > インタビュー > 久保田 雅也

インタビュー

株式会社 ビームス 第一事業本部 BEAMS一部 ウィメンズ課 統括ディレクター 久保田雅也氏インタビュー

50周年おめでとうございます。
僕は今回、「Asia Fashion Collection」の審査員をやらせてもらってすごく良かったです。僕自身、文化服装学院の卒業生なので、こういった空気感は懐かしいと思ったし、学生ならではのアイデア、モチベーションもすごく強く感じることができましたね。僕が卒業したのは15年ぐらい前で、今振り返ると当時はクリエイティビティを高めるという機運が高かったように思います。ブランドとしてビジネスをやるためには、クリエイティビティも必要だし、むしろそれは最低限の条件で、今の時代はそれよりも“売る”というところを成立しないと商売できないと思うので、“売る”視点を強く持っているこのプロジェクトにはすごい共感できましたね。

いま僕は、主にウィメンズのBEAMS BOYとRay BEAMSという、年齢でいうと20代~30代をターゲットにした2つのカジュアルレーベルの買い付けを担当しています。買い付けの時には、洋服の素材感を一番重要視していますね。どうしても若手デザイナーの子たちは素材感が劣ってしまう傾向にあって、売り場に入れてもそれだけで見栄えがしなくなってしまうので、ものすごくデザインが良くても、商品として取り扱うのは難しいかなという判断になってしまいます。若い子たちは、どうしても手配できるバリエーションが少なく、生地選びの経験がないという傾向にあって、素材クオリティが低いだけで、やはり他のブランドに見劣りしてしまう。値段と洋服本体がつり合わない一番の原因になる洋服の素材感には、本当に気を遣っています。

ファッション業界を目指すにあたって、『洋服をちゃんと着てきているか』ということが、一番重要なるんじゃないかなぁと思います。デザインを創造したり、洋服やブランドの歴史などに色々な知識がある人はたくさんいるんですけど、洋服そのものをたくさん着てきているなぁと感じる人は少ないです。サイズの失敗でも何でもいいんですが、間違ったことは身をもって経験することで覚えていくので、挑戦して失敗するってすごく大事。色々な洋服を着てきて、なおかつ失敗してきた人の方が、洋服の着こなし方や見せ方、もちろん作り方により説得力がありますし、逆にそういう人じゃないとデザイナー、バイヤー、マーケティング、どの職種でも、最前線でやっていくのは難しいじゃないかなぁと思います。実はビームスは、会社の伝統みたいなところもあるんですけど、バイイングの時にけっこう試着するんですよ。試着しないでパパっと決めちゃうタイプのバイヤーさんもいるんですけど、うちは試着ばっかりしてすごい時間がかかるんです(笑)。ちゃんと洋服を着てきた経験は、着る人の目線に立つことができる、ということに繋がっていくんだと思うので、若い方にもいっぱい洋服を着ることを経験して欲しいですね。

だから、本当はバンタンの中にも、洋服や素材の見本とかがあって、色々なタイプの洋服を着てみたり、生地に触ったりできる資料室はあったらいいんじゃないかなーと思います。実際に、素材を触ったことがあるかないかの経験を持つことで素材クオリティが上がるし、生地の違いがわかる、だから生地の素材感と価格帯を知って自分のブランドのビジネスに活かせると思いますしね。

今回の「Asia Fashion Collection」の取り組みに関しては、僕自身すごい共感できるし、クリエイティビティだけじゃ勝負できないんだっていうところが、絶対にデザイナーさんたちを成長させると思うので、僕達の会社も何か手伝えることがあれば、審査員でも何でもお声かけていただきたいなと思います。ビームスには、ファッションの勢いをもっともっと加速させる使命があるので、若い世代の人たちが洋服に興味がないなんて時代が来ないようにしたいですね。そのためにもバンタンさんには、今現在のファッション業界の人たちをもっともっと巻き込んで、さらに大物を巻き込んでほしいですね。ビジネスとして成立できるデザイナーの教育に期待しています。