FAKE TOKYO チーフディレクター 柳翔吾氏インタビュー

バンタンはもっと歴史のあるスクールだと思っていたので、まだ50周年なのかと驚きました。それだけ、僕の中でファッション業界におけるバンタンの印象は強いのだと思います。というのも、僕が学生の頃からバンタンに通っている友達がいたり、FAKE TOKYOで取り扱っているブランドの中にバンタン在校生のブランドがあったりと、昔から関わることが多かったからだと思います。FAKE TOKYOは、若いデザイナーやアーティストを発掘して広めていくことが重要だと考えているので、僕も色んなファッション専門学校のショーや展示を見に行くのですが、その中の一つとしてバンタンのイベントにも、何度かお伺いしたことがあります。バンタンデザイン研究所の卒業生であるBALMUNG(バルムング)のデザイナーHachiくんは、ブランドのデビュー前から付き合いがあって、以来、現在もお取り引きさせてもらっていますし、仕事としては、大阪校の授業でアドバイザーとして参加させていただいたこともあります。

今回は、『Asia Fashion Collection』の審査員をやらせていただきましたが、コレクションの見せ方や作品のクオリティは数年前に比べて確実に高くなっていると思いました。ただ、今の時代は色々な情報が入りやすいからなのか、“今の世の中はこうだから”という分析を上手にして、それをアウトプットしているだけの洋服が多い印象もあり、キレイにまとまっているのですが、若手デザイナーだからこそ持てるダイレクトに想いを伝えきっているブランドが少ないように感じました。情報が入りやすい世の中で、自分の判断で色んな物を組み立てるからこそ、感じるままに発信することは大切だと思います。その筋を通さずに、発信する側が周囲の流れやトレンドばかりを気にしてしまっているから、ファッション業界全体が飽和してしまっているんじゃないかと思います。厳しい言い方かもしれませんが、顧客はブランドの個性に惹かれてファンになっていただけるわけですよね。これから先、一つのブランドとして独立してやっていく気持ちがあるのであれば、ちょっと破天荒なくらいの個性を魅せ続けられる表現力を身につけることに力を入れたほうが、未来があると感じました。

『Asia Fashion Collection』の企画は、とても夢があっていいなと思います。この舞台で評価されれば、NYファッションウィークでのランウェイデビューができるのですから、デザイナーとしてステップアップするためには、またとないチンスですよね。先にも話した通り、僕は今まで色々な学生のコレクションを見てきていますが、2、3年前に比べて、参加しているデザイナーの数自体が極端に減った印象があります。それって、若い人たちにファッションデザインの魅力がうまく伝えられていない僕らの責任でもあると思うんです。消費者も売り手もどっちつかずで、盛り上がっていない感じがあります。だからこそ、若手デザイナーを発掘して、育てていくという視点で行われている『Asia Fashion Collection』は、ファッション業界を底上げしていくために大きな意味をもつコンテンツなのだと感じています。

また、僕はデザイナーを育てるだけではなく、色々なジンルが交わっている環境で学べるところが、バンタンの強みだと思っています。もっと様々なジンルをまたいで行うプロジェクトがたくさんあったら面白いものが生まれるのだろうと思いますね。多角的に色んな要素からファッションを提案する時代だと思うので、デザインにおいて革新的な何かが生まれない限り、新しいファッションのスタイルを生み出すのは難しいと思うんです。そういう時代を生き抜いていくために、バンタンにはファッションのコミュニティや新しい価値観を生みだすようなイベントにどんどん挑戦していってほしいですね。僕たちもファッションと関係のない企業にファッションの価値観を与えていくプロデュースをしているので、それを組み合わせて、バンタンとも取り組みができたら面白いと思います。これからも、ファッション業界全体を盛り上げていけるように一緒に頑張っていたいですね。