『MORI YOSHIDA』オーナーパティシエ 吉田守秀氏インタビュー

創業から50年なんですね。そんな節目のタイミングでパリに留学するパティシエの学生たちを受け入れることになるなんて、とても嬉しいです。

僕は、今フランス・パリで、「MORI YOSHIDA」というパティスリーをやっています。日本でいう和菓子が、パリでいうフランス菓子にあたりますが、和菓子が日本の宗教行事とリンクしているように、フランス菓子もパリの歴史や文化と一体になっています。学生の皆さんにも、そういうフランス菓子を見て味わって、フランスの文化までを捉えていってほしいですね。日本で進化したフランス菓子は、歴史、文化からパティスリーだけを切り離して、純粋に日本人が美味しく食べられるようにアレンジされてきたものです。ラーメンやカレーもそうですけど、日本人はそういうことが得意ですし、リスペクトすべき日本の特徴だと思います。留学中にそういうことも実感できるとパリでの経験がより面白くなると思いますよ(笑)。

あとは、やっぱり素材ですね。バター、フルーツ、何もかも日本とは全然違います。フランスには、美味しいバターがある、粉がある、牛乳がある、だからこそフランス菓子が生まれたんです。それを日本で再現しようとすると、アメリカの粉と、日本のバターと牛乳で作るので、フランスのそれとは全く違うものになります。僕はフランスの食材で、フランス菓子を作ってみたいと思ったんです。自分が作ったら、どんなフランス菓子が生まれるのか見てみたかったんですね。

自分が未来を選択する時に、何が正解で不正解かは分かりません。僕も自分がやりたいと思ったことを、やらなかったこともいっぱいありました。いつもあと一歩が踏み出せなかったので実現できなかったんです。でも、僕の友達がクープ・ド・モンドに出るとか、有名なパティスリーで働くとか、いろいろ聞いたタイミングで、じゃあ僕は何をやったら一番楽しいかを考えた時に、パリで自分のお店を開くっていうのはワクワクするなぁと思いついたんです。それまでは何かをする時に、できない理由を考えてしまっていたんですが、それを思いついた時には、逆の発想でポジティブに考えることができました。できない理由を、逆にこれができればお店をオープンできるっていうタスクとして捉えてリストアップしていったんです。そのリストアップした項目を消していけば、最後には達成できるんです。ワクワクすることが僕にとって一番の原動力になんだなと思って、それから僕は何かをする時には、自分がワクワクできるほうを選ぶようにしています(笑)。

学生には、全ての基本となるフランスの素材はもちろん、僕の背中を見せる、じゃないですけど、僕がやっていることを見てもらいたいです。来年シンガポールのマリーナベイサンズというホテルでフェアをやる予定なんですけど、そういうところを見せたら、学生たちも将来自分もそういうことができるんじゃないか、パティシエになったら自分もそんなことをやってみたいと思ってもらえる選択肢になると思うんですよ。それって面白そうだなって思って(笑)。学生の視野が広がって、世界が広がるとやりたいことができるようになると思います。

あとフランスでやっていくためには、やっぱりフランス語やコミュニケーション力が必要だし、何より折れない心が大切です(笑)。当たり前ですけど、フランスでは日本人は外国人なのでアウェーなんです。そこで言葉がわからないからって、閉じてしまうのはやっぱりダメで、笑顔でコミュニケーションすることが必要です。まず自分がオープンになって心を開くことが、相手も心を開いてくれることにつながると思います。自分が開けると、世界が開けるんじゃないかなと思いますよ。一緒にワクワクできるように頑張っていきましょう。