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インタビュー

アステリスク 和泉光一氏インタビュー

創立50周年おめでとうございます。バンタンは本当に色々なことにトライし続けてきた学校だと思うので、講師として学校にいても刺激的で面白いことがたくさんあります。今後ますます発展していってほしいですね。

僕がレコールバンタンの活動に携わるようになったのは10年以上前のことです。ちょうど僕がコンクールに勝ち始めていた頃、レコールバンタンで講師をしていた製菓学校の同級生に声をかけられたことがきっかけでした。最初は特別講師として年に数回ほど関わっていましたが、そのうちレコールバンタンの卒業生が僕の店で働くようになったことで、学校との関係がより深くなりました。さらに、僕は3年ほど自分がお店にはいらずに、日本も含めて世界の色々な国で講演やワークショップなどを行っていた時期があったので、その時は月に何度もレコールバンタンで講師としてお世話になりましたよ。

10年前というと、お菓子は“味”+“アート”と言われはじめた時代で、僕らのようなパティシエもそういった風潮に後押しされて世界大会に出ていた時期です。当時、僕らがイメージする製菓学校というのは、現場に出る前に基礎を教えて職人を育てる職業訓練校のような存在だったのですが、レコールバンタンは、グループ校にデザインの学校があるだけに、デザインの面でもとても楽しめそうな学校だと思っていました。味もさることながら、アート的センスをお菓子に結びつけた授業をしている点も、今までなかったタイプの学校ですごく斬新だなと感じていました。

いまは、パティシエ業界自体がパティシエブーム最高期だったころからは縮小してきていて、専門学校などもひと昔前の職人を育てる雰囲気に戻ってきている感じがします。教え方にも変化があって、それまでは個々の感性を伸ばしていくというところを強く出すように教えていましたが、それプラス、もう一回ベーシックな基礎の部分をしっかりやらせて業界に出していくというような傾向が強まってきました。それでも、クリエイティブなことやアート性の高いことをお菓子づくりと絡めて教えていくというのは、絶対必要だと思っています。“美味しいもの”と“美しいもの”というのは隣り合わせです。現在の飲食事業はただ美味しいレシピを作って「はい、どうぞ」という仕事ではなくなり、見た目のインパクトもすごく大事になってきているので、アート的に作品を仕上げたり、色合いを勉強したりして、より感性を磨く授業を、ぜひレコールバンタンでは続けていって欲しいです。

僕は現在、アステリスクのオーナーシェフをやっています。お店をオープンしてから3年間はずっと厨房に入って一生懸命お菓子を作っていましたが、僕は常に新しいものを探していきたいと思う性格なので、今では年間の3分の1は仕事で海外などに出ています。実は、お店をオープンする前から「3年店にこもったら外に出て行く」と心に決めていて、社員にも「3年経ったら表に出るぞ」と話していたんです(笑)。いつまでも引きこもっていたら新しい情報が入ってこないですからね。常に感覚・感性が新しくいられるように、業界以外の色んな人と会うようにして次の取り組みに活かせるように意識しています。その点が、いつも新しいことにチレンジしているバンタンと合うところなのかもしれません。

僕ら講師もバンタンと一緒に色んなイベントを経験させてもらってきましたが、それがきっかけになって僕も勇気をもらえたことが多々ありました。バンタンには、衣食住という暮らしの中で必要な、服づくり、空間づくり、そして、食に関わる分野全てを学べる学校があるので、全てをうまく取り合わせて勉強できるトータルコーディネートのような分野があったら面白そうだなと思いますよ。パティシエは魅せることが出来る仕事です。パティシエを目指しながら他分野のエッセンスを加えた授業ができたら、もっと面白い化学反応が起こるんじゃないかなと考えているので、レコールバンタンには、他分野の授業とも連携して、もっと人を魅了できるパティシエを世に送り出していってほしいです。